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16号(2017年8月) 健科研リポート | 兵庫県立健康生活科学研究所 健康科学研究センター

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健科研リポート第 16号

お た ふ く か ぜ は 、 流 行 性 耳 下 腺 炎 あ る い は ム ン プ

ス と も 呼 ば れ 、 ム ン プ ス ウ イ ル ス に よ っ て 起 こ る 全

身 性 ウ イ ル ス 感 染 症 で す 。感 染 は 、患 者 の 咳 や く し ゃ

み に よ る 飛 沫 を 吸 っ た り 、 唾 液 が 付 着 し た 手 指 な ど

を 介 し て 起 こ り ま す 。2~3 週 間 ( 平 均 18 日 前 後 )

の 潜 伏 期 を 経 て 発 症 し ま す が 、 感 染 し て も 症 状 が 現

れ な い 不 顕 性 感 染 も 30~35%み ら れ ま す 。発 症 時 の

症 状 は 耳 下 腺 な ど の 唾 液 腺 の 腫 れ や 痛 み 、 発 熱 な ど

で 、 通 常 は 1~2 週 間 で 軽 快 し ま す が 、 合 併 症 と し

て 無 菌 性 髄 膜 炎 、 脳 炎 、 難 聴 、 精 巣 炎 、 卵 巣 炎 な ど

を 起 こ す こ と も あ り 、 特 に 難 聴 は 永 続 的 な 障 害 と な

り ま す 。

ム ン プ ス ウ イ ル ス は 、遺 伝 子 の 塩 基 配 列 に よ っ て 分 類 さ れ て お り 、現 在 の と こ ろ A~

N(E,M は 除 く ) の 12 群 の 遺 伝 子 型 が 報 告 さ れ て い ま す 。

当 研 究 セ ン タ ー で は 、 感 染 症 発 生 動 向 調 査 に お い て 県 内 の 定 点 医 療 機 関 か ら の お た

ふ く か ぜ 患 者 情 報 を 収 集 、 解 析 し 、 患 者 か ら 採 取 さ れ た 検 体 か ら の ウ イ ル ス 検 出 や 遺

伝 子 解 析 な ど に よ っ て 、 県 内 流 行 の 動 態 把 握 に 努 め て い ま す 。

県 内 の 定 点 医 療 機 関 に お け る 週

別 の 患 者 報 告 数 の 推 移 を 図1に 示

し ま す 。 お た ふ く か ぜ は4~5年 の

周 期 で 全 国 規 模 の 流 行 を 繰 り 返 す

こ とが 知ら れて おり 、県 内で も

2005年 以 降 で は 、2006~07年 、

2010~11年 及 び2016~17年 と 、周

期 的な 流行 が確 認さ れま した 。

2016~17年 の 流 行 実 態 を 把 握 す る

た め 、 こ の 間 に ム ン プ ス ウ イ ル ス

が 検 出 さ れ た17例 の 患 者の 検 体 に

2 0 1 7

8

1 6

兵 庫 県 立 健 康 生 活 科 学 研 究 所 健 康 科 学 研 究 セ ン タ ー

健 科 研 リ ポ ー ト

お た ふ く か ぜ と は

の 流

は ?

図 1 定 点 あ た り お た ふ く か ぜ 患 者 報 告 数 の 推 移 写 真 1 お た ふ く か ぜ に よ る 唾 液 腺 腫 脹 の 様 子 ( ア メ リ カ 疾 病 管 理 予 防 セ ン タ ー ホ ー ム ペ ー ジ よ り )

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 2 0 0 5 2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9 2 0 1 0 2 0 1 1 2 0 1 2 2 0 1 3 2 0 1 4 2 0 1 5 2 0 1 6 2 0 1 7

(2)

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健科研リポート第 16号

つ い て 遺 伝 子 型 を 調 べ た と こ ろ 、15例 がG型 、2例 がB型 で し た 。G型 の ウ イ ル ス 株 に つ

い て 詳 細 に 検 討 し た と こ ろ 、 す べ て が 主 に 西 日 本 の 流 行 型 と さ れ るGw型 で あ る こ と が

判 明 し ま し た 。 こ の 型 は 東 京 都 や 石 川 県 な ど か ら も 同 時 期 の 流 行 が 報 告 さ れ て い ま す 。

な お 、 ム ン プ ス ウ イ ル ス を 検 出 し た17例 中 、13例 は 流 行 性 耳 下 腺 炎 ( 疑 い )、4例 は

無 菌 性 髄 膜 炎 と 診 断 さ れ て い ま し た 。 無 菌 性 髄 膜 炎 の 起 因 病 原 体 と し て は 、 通 常 エ ン

テ ロ ウ イ ル ス が 最 も 多 く 検 出 さ れ ま す が 、 お た ふ く か ぜ 流 行 時 は ム ン プ ス ウ イ ル ス に

よ る 無 菌 性 髄 膜 炎 患 者 が 増 加 す る た め 注 意 が 必 要 で す 。

感 染 を 予 防 す る に は 、 ワ ク チ ン 接 種 が 最 も 効 果 的 な 方 法 で す 。 お た ふ く か ぜ は 軽 症

の 場 合 が 多 い で す が 、 重 い 合 併 症 を 引 き 起 こ す こ と が あ り 、 年 齢 が 高 く な っ て か ら 感

染 す る と 難 聴 等 の 発 症 率 が 上 昇 す る と の 報 告 も あ る た め 、 ワ ク チ ン 接 種 に よ る 予 防 が

重 要 で す 。 ま た 、 患 者 と の 接 触 後 の 予 防 策 と し て 緊 急 に ワ ク チ ン 接 種 を 行 っ た 場 合 、

症 状 の 軽 快 は 認 め ら れ て も 発 症 を 予 防 す る こ と は 困 難 と 言 わ れ て い ま す 。 罹 患 し や す

い の は3~6歳 と さ れ て い ま す の で 、集 団 生 活 に 入 る 前 の ワ ク チ ン 接 種 を お 勧 め し ま す 。

な お 、お た ふ く か ぜ ワ ク チ ン は 現 在 の と こ ろ 定 期 接 種 に は 導 入 さ れ

て お ら ず 、任 意 接 種 と し て 行 わ れ て い ま す 。日 本 小 児 科 学 会 は 1 歳 と

小 学 校 入 学 前 1 年 間 の 2 回 接 種 を 推 奨 し て お り 、地 域 に よ っ て は 公 費

助 成 が あ り ま す の で 、 お 住 ま い の 自 治 体 に お 問 い 合 わ せ く だ さ い 。

( 感 染 症 部 髙 井 伝 仕 、 荻 美 貴 、 近 平 雅 嗣 、 秋 山 由 美 、 稲 田 忠 明 )

皆 さ ま 、 臭 素 酸 (HBrO3) を ご 存 知 で し ょ う か 。 浄 水 場 で 行 う オ ゾ ン 処 理 は 、 か び 臭 原 因 物 質 等 を 分 解 ・ 除 去 す る 一 方 で 、 河 川 水 ( 水 道 原 水 ) な ど に 比 較 的 高 濃 度 に 臭 化 物 (Br) イ オ ン が 含 ま れ る 場 合 に は 、 臭 素 酸 を 生 成 さ せ

ま す 。 ま た 、 臭 素 酸 は 殺 菌 消 毒 の 目 的 で 使 用 さ れ る 次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ム 製 造 時 の 副 生 成 物 の 一 つ と し て も 知 ら れ て い ま す 。 臭 素 酸 の 有 害 性 の 観 点 か ら 、 厚 生 労 働 省 は 水 道 水 の 基 準 値 を 0.01mg/L 以 下 に 設 定 し て い ま す 。

兵 庫 県 で は 、 将 来 に わ た っ て 安 全 で 安 心 な 水 道 水 を 確 保 す る た め 、 兵 庫 県 水 道 水 質

管 理 計 画 を 策 定 し て 、水 質 監 視50地 点 の 水 道 原 水 と 水 道 水 の 水 質 調 査 を 行 っ て い ま す 。

本 計 画 で は 、水 質 基 準 項 目 の 51 物 質( 臭 素 酸 を 含 む )及 び 水 質 管 理 目 標 設 定 項 目 の 145

物 質 の 合 計 196 物 質 を 調 査 項 目 と し て い ま す が 、 当 研 究 セ ン タ ー で は 、 こ れ ら の 物 質

に 加 え て 全 国 で 比 較 的 検 出 率 の 高 い 物 質 や 水 質 汚 染 事 故 の 原 因 物 質 等 の 合 計 500 物 質

の 分 析 法 開 発 と 水 質 調 査 も 行 っ て い ま す 。県 下 に お け る 2016 年 度 の 水 質 調 査 結 果 で は 、

を 予

す る た め に

兵 庫 県 下 の 実 態 調 査 結 果

臭 素 酸 ( H B r O

(3)

-3-

健科研リポート第 16号

臭 素 酸 は 水 道 原 水 、 水 道 水 と も に 基 準 値 以 下 と な っ て い ま す 。 ま た 、 厚 生 労 働 省 に よ

る 全 国 の 水 質 調 査 結 果(2012 年 度 ~2014 年 度 )に お い て も 、同 様 に 基 準 値 以 下 と な っ

て い ま す 。 し か し な が ら 、 水 道 原 水 の 水 質 悪 化 、 オ ゾ ン の 注 入 率 や 反 応 時 間 、 次 亜 塩

素 酸 ナ ト リ ウ ム の 純 度 等 に よ っ て 、 臭 素 酸 濃 度 は 上 昇 す る 場 合 が あ る こ と か ら 、 今 後

と も 継 続 し た 水 質 監 視 が 重 要 と な っ て い ま す 。

水 道 水 中 の 臭 素 酸 の 検 査 方 法 と し て 、 厚 生 労 働 省 告 示 第 261 号 の 別 表 18 に お い て 、 イ オ ン ク ロ マ ト グ ラ フ - ポ ス ト カ ラ ム 吸 光 光 度 法 (IC-PC法 ) が 規 定 さ れ て い ま す 。 こ の 方 法 は 、 ① 高 濃 度 の 硫 酸 を 使 用 す る た め 装 置 へ の 負 荷 が 高 い こ と 、 ② 検 体 に よ っ て は 検 出 感 度 が 基 準 値 の 1/10 濃 度 で あ る 0.001mg/L が 満 た さ れ な い こ と な ど の 課 題 点 が 指 摘 さ れ て い ま す 。こ の た め 、

兵庫県では厚生労働科学研究班に参画し、高速液体クロマトグラフ-質量分析法 (LC/MS/MS 法 ) に よ る 分 析 法 の 検 討 を 行 い ま し た 。 具 体 的 に は 、 分 離 カ ラ ム と し て ポ リ メ タ ク リ レ ー ト 担 体 に 四 級 ア ン モ ニ ウ ム 基 を 導 入 し た カ ラ ム を 適 用 し 、 逆 相 条 件 下 で 臭 素 酸 を 高 感 度 に 分 析 す る LC/MS/MS 法 を 確 立 し ま し た ( 図 2)。

図 2 臭 素 酸 標 準 溶 液 (0.001mg/L) の MS/MSク ロ マ ト グ ラ ム

こ れ ら の 条 件 下 で 、 厚 生 労 働 省 が 規 定 し た 妥 当 性 評 価 ガ イ ド ラ イ ン 試 験 (5 日 間 、5 試 行 )と し て 、水 道 水 に 臭 素 酸 0.001mg/L を 添 加 し て 分 析 を 行 っ た 結 果 、真 度 は 95.9%( 適 合 範 囲 70~120% )、 併 行 精 度 は 4.2% ( 適 合 範 囲 25% 未 満 )、 室 内 精 度 は 6.1% ( 適 合 範 囲 30% 未 満 )で し た 。ま た 、臭 素 酸 の 検

査 時 間 は 1 検 体 あ た り 10~20 分 以 内 、 定 量 下 限 値 は 0.0001mg/L で 、 迅 速 か つ 高 精 度 な 分 析 法 と し て 有 効 で あ る こ と が 確 認 で き ま し た 。 さ ら に 、LC/MS/MS 法 と IC-PC 法 で 分 析 値 に 差 が な い こ と も 確 認 で き ま し た ( 図 3)。 厚 生 労 働 省 は 、 当 研 究 セ ン タ ー が 提 出 し た 分 析 法 関 連 デ ー タ 等 を 参 考 と し な が ら 検 討 を 行 い 、 2017 年 4月 1日 付 け で LC/MS/MS 法 を

新 し い 検 査 方 法 の 一 つ と し て 告 示 し ま し た 。

県 民 の 皆 さ ま の 水 道 水 に 対 す る 安 全 、 安 心 を 確 保 す る た め 、 当 研 究 セ ン タ ー で は 、

迅 速 か つ 高 精 度 に 測 定 が 可 能 な LC/MS/MS 法 を 活 用 し て 、 今 後 も 水 質 監 視 に 貢 献 し て

い き ま す 。 ( 健 康 科 学 部 鈴 木 雅 和 、 川 元 達 彦 )

新 し い 検 査 方 法 [ L C / M S ( / M S ) 法 ] の 導 入 に つ い て

お わ り に

図 3 LC/MS/MS法 と IC-PC 法 に よ る 分 析 値 の 比 較

(4)

-4-

健科研リポート第 16号

近 年 、 性 感 染 症 の う ち 「 梅 毒 」 と 診 断 さ れ た 患

者 数 が 増 え 続 け て い ま す 。 国 立 感 染 症 研 究 所 の 発

表 に よ る と 、2016 年 の 全 国 総 患 者 数 は 4,559 人 で 、

前 年 比 較 1.7 倍 で あ り 、今 年 も 昨 年 を 上 回 る ペ ー ス

で 感 染 が 広 ま っ て い ま す 。

兵 庫 県 内 に お い て も 、今 年 の 累 積 患 者 数 は 99 人

(6 月 末 ま で ) と な り ま し た 。 性 別 で は 、 男 性 64

人 、女 性 35 人 で 、昨 年 の 年 間 患 者 数( 男 性 141

人 、 女 性 41 人 ) に 比 べ て 、 女 性 の 割 合 が 高 く

な っ て い ま す 。年 齢 階 級 別 で は 、男 女

と も に 20 歳 代 と 30 歳 代 が 多 く 、全 体

の61% を 占 め て い ま す( 図 4 、 図 5 )。

梅 毒 は「 梅 毒 ト レ ポ ネ ー マ 」と い う

細 菌 に よ っ て 発 生 す る 感 染 症 で す 。梅

毒 ト レ ポ ネ ー マ が 皮 膚 や 粘 膜 の 小 さ

な 傷 口 か ら 侵 入 す る こ と で 感 染 し ま

す 。不 特 定 多 数 の 人 と の 性 的 接 触 は 感

染 の リ ス ク 因 子 で あ り 、妊 婦 を 通 し て

胎 児 が 感 染 す る と 死 産 や 重 い 障 害 に つ な が る 恐 れ が あ り ま す 。

梅 毒 は 感 染 し て か ら 約 3 週 間 で 感 染 し た 部 位 に し こ り が で き る こ と

が あ り ま す が 、 自 然 に 軽 快 し ま す 。3 か 月 以 上 経 過 す る と 手 の ひ ら 、

足 の 裏 、 体 全 体 に う っ す ら と 赤 い 発 疹 が 出 る こ と が あ り ま す が 、 数

週 間 以 内 に 消 え る 場 合 が あ り ま す 。 こ の よ う に 、 梅 毒 は 感 染 に 気 づ

き に く い 病 気 で 、 発 疹 な ど の 症 状 を 放 置 し て 重 症 化 す る と 脳 や 心 臓

に 重 い 合 併 症 を 起 こ す 危 険 が あ り ま す 。 そ の た め 、 早 期 発 見 、 早 期 治 療 が 大 切 で す 。

コ ン ド ー ム な ど の 感 染 防 止 を 行 わ ず に 性 的 接 触 が あ る な ど 、感 染 に 不 安 の あ る 方 や

症 状 な ど で 感 染 が 疑 わ れ る 方 は 、感 染 を 広 め な い た め に 早 期 に パ ー ト ナ ー と と も に 検

査 を 受 け て く だ さ い 。 各 健 康 福 祉 事 務 所 ( 保 健 所)で 、 匿 名 ・ 無 料 検 査 を 実 施 し て い

ま す 。 ( 感 染 症 部 : 松 尾 美 也 子 、秋 山 由 美 、危 機 管 理 部 : 西 下 重 樹 )

老 朽 化 に 伴 い 研 究 セ ン タ ー の 施 設 を 加 古 川 市 神 野 町 に 移

転 整 備 し ま す 。( 新 庁 舎 供 用 開 始 予 定 :2018 年 4 月 )

セ ン タ ー 便 り

と ぴ っ く す

編 集 ・ 発 行 兵 庫 県 立 健 康 生 活 科 学 研 究 所 健 康 科 学 研 究 セ ン タ ー

〒 6 5 2 - 0 0 3 2 神 戸 市 兵 庫 区 荒 田 町 2 丁 目 1 番 2 9 号

T E L 0 7 8 - 5 1 1 - 6 6 4 0 F A X 0 7 8 - 5 3 1 - 7 0 8 0

E - m a i l w e b m a s t e r @ h y o g o - i p h e s . j p U R L h t t p : / / w w w . h y o g o - i p h e s . j p / 図 4 梅 毒 の 男 女 別 患 者 数 の 推 移 ( 兵 庫 県 内 )

7 4 9 8 21

41 35 28

14

27 34 68

141

64

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

年 男

6月末まで

図 5 性 年 齢 階 級 別 患 者 数 の 分 布

10-19

20-29

30-39

40-49

50-59

60-女

年齢階級

2014年(41人) 2017年6月末(99人)

※ 先天性梅毒(0歳)1名を除く

写真3 梅毒ト

参照

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